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ピロリ菌感染症 胃がんは感染症です!

日本人のピロリ菌感染率の過去と未来予測


Q. 胃がんは感染症ですか?

A. そうです。子宮頸がんはHPV、肝臓がんの多くはHBVとHCVというウイルスが原因であることが分かっていますが、近年、胃がんもヘリコバクター・ピロリ菌による感染症であることが判明しています。3つの「感染症がん」で日本のがんの25%を占めることになりました。



Q. ピロリ菌はどのようにして感染しますか?

A. ヒトをはじめ、いくつかの哺乳類の胃の中に住んでいます。昔は(あるいは発展途上国では今なお)便の中に菌が排泄され、それにより飲み水が汚染されて、ヒトに感染していたと考えられますが、公衆衛生が整った現在では、母子感染(口移しなど)が主であると考えられています。



Q. キッスしても大丈夫ですか?

A. 大人同士キッスしても、あるいは盃を酌み交わしても、統計上で有意にはうつらないことが分かっています。大人は胃酸が多いため(乳幼児に比べ)、ほとんど感染せず、感染しても一過性で治ることが多いといわれています。 昔、胃カメラの鉗子(胃の粘膜をつまむ器具)が通る穴の中で菌が繁殖して患者にうつったと考えられるケースがありましたが、現在は病院において胃カメラの消毒を徹底しています。



Q. 胃がんは漬物をたくさん食べる東北地方に多いので、塩分が悪いのかと思っていましたが・・・

A. ピロリ菌が発見される前までは、「塩分、魚や肉・魚のおこげ、炭水化物の取りすぎ、あるいは性別(男性)」などが関係していると言われていました。しかし現在は、「HP感染のないところに胃がんは発生しない」ことが分かっています。実際、「食塩、魚や肉・魚おこげ・・・」などの要因だけでは、胃がんは発生しません。



Q. 本当に「HP感染のないところに胃がんは発生しない」のですか?

A. はい、そのとおりです。次の報告を見てみてください。
・上村直実(呉共済病院、現国際医療研究センター):3161例の胃がんを調べ、ピロリ菌に感染していない胃がん患者は、わずかに0.66%。
・浅香正博教授(北海道大学):胃がん患者の98%はHPに感染。



Q. ピロリ菌に感染すると、何%の人が胃がんになりますか?

A. ピロリ菌陽性の人が1年間に胃がんが発生する率は平均0.5%ほどと考えられます。



Q. 年間0.5%とは少ない気がしますが・・・

A. 年間0.5%は少ない数に思えるかもしれませんが、年々これが累積して、一生で考えると、ピロリ菌陽性の人の1割が胃がんになる計算になります。50歳以上で8割の人がピロリ菌を持っているため、この年齢以上の12人に一人が胃がんになる算になります。 実際、全国で一年に10数万人の人が胃がんにかかります。



Q. 逆に、生涯で9割のひとは、胃がんにならないということになりますが・・・?

A. その理由は良く分かっていません。



Q. 除菌について教えてください。 まずは、その意義・目的について。

A. 潰瘍の予防や治療にとって除菌は重要です。 しかし、さらに日本人にとって、差し迫り重要なことは、現在ピロリ菌に感染している人を除菌し①「胃がん発生を予防すること」、さらに ②「乳幼児等に感染を広げないようにすること」です。 そうするとで、日本の胃がんを根絶することが可能なのです。



Q. 除菌の目的は他にありますか?

A. 胃がんの予防のほかに、 ピロリ菌陽性の「潰瘍」や「機能異常の胃」を治癒させることが期待できます。 胃にできる「MALTリンパ腫」という腫瘍や「特発性血小板減少症」といった病気を治すことも期待できます。



Q. どのようにして、除菌しますか?

A. 二つの抗生物質とひとつの胃酸の分泌を抑える胃薬(PPIとよばれる薬)を1週間内服します。



Q. 副作用はありますか?

A. 抗生物質で、腸内細菌が影響を受けるため、内服中に下痢することがあります。約15%の割合ですが、これで薬を中断しなければならないことはほとんどありません。



Q. 薬を飲んだら、100%除菌できますか?

A. 1回の除菌での除菌率は平均85%ほどです。2回の除菌でもっと率が上がりますが、100%は除菌できません。除菌に失敗する理由は、これまでたくさんの抗生物質を飲んできたせいで、菌が死ににくくなっているためと考えらます。



Q. 高齢者は、若いひとに比べ除菌は難しいとかありますか?

A. 今のところそのデータはありません。



Q. 除菌に2度失敗しました。 何度でもした方が良いですか?

A. 日本の保険制度では、2回までしかできません。自費になりますが、3回目にチャレンジするのは良いことだと思います。



Q. 除菌成功後に、再感染することがありますか?

A. 約1%あると言われています。



Q. どうしても除菌できない場合は、どのように考えたらよいですか?

A. 胃カメラを受け定期に受ければ、大丈夫です。早期発見で、命を落とすことは、ほぼ100%ありません。除菌に成功し、安心しきって胃カメラを怠り、胃がんになるより、まだよかったと考えましょう。



Q. 除菌に成功しても、胃がんになる可能性があるのですか?

A. 除菌できれば、30歳以下は100%、40歳代でもほぼ100%予防できます。 しかし、年齢が上がるに従い、50歳代で90%、60歳代で80%、70歳代では70%まで予防効果が下がります。 よって高齢になるほど、除菌できても胃がんになる可能性が残ります。



Q. どうして、高齢になるほど予防効果が落ちるのですか?

A. ピロリ菌感染→急性胃炎→萎縮性胃炎となり、この萎縮性胃炎を背景に胃がんが発生します。 委縮が軽いうちは、除菌すると粘膜は正常に戻りますが、高齢になり萎縮性胃炎の程度が強くなると、 除菌をしても萎縮は元に戻りません。また 除菌した時には、時すでに遅くて“胃カメラで見つからないような小さながんがすでに発生している”ということもあります。



Q. 検査で明らかに萎縮性胃炎があるのに、HPが検出されないことってありますか?

A. あります。 萎縮性胃炎が強くなると、菌の居場所がなくなり菌の數が減ります。 よって、だんだん菌が検出されなくなっていきます。 委縮が強く、「ピロリ菌が検出されないタイプ」が最もがんになりやすいことが分かっています。



Q. どのようにして、萎縮の程度をみるのですか?

A. 胃粘膜から分泌されるペプシノーゲン量(血液検査)の低下具合で、萎縮の程度を判定します。



Q. 除菌に成功しても、高齢者はがんになる可能性が残るということですが、どうすればよいですか?

A. 仮に70歳代の場合、除菌に成功すれば、70%の予防効果があるわけですから、まずは除菌成功ということで安心しましょう。 しかしなお残る胃がんの可能性30%については、胃カメラを定期的に受けることでカバーできます。



Q. つまり、「除菌に失敗した場合は定期的に胃カメラでカバー」、「除菌に成功した場合も、のこる胃がんの可能性に対しても定期的に胃カメラでカバー」ということで安心してよろしいでしょうか?

A. 是非そうしてください。 定期検査の間隔は、菌の有無、年齢や胃粘膜の萎縮ぐあいによりますので、先生に相談してください。



Q. 45歳、女性。菌ははじめからいませんし萎縮もないと言われたのですが、胃カメラはしなくてよいでしょうか?

A. 胃がんになる可能性は大変少ないです。しかし、何年かに一度はやっていた方がいいでしょう。



Q. 後期高齢者には除菌をすすめない先生もいると聞いたことがありますが・・・?

A. そういう場合もあると思います。薬の副作用は大したことは無いとは言え、若いひとに比べより考慮しなければいけません。 年齢や身体の状態にて、「寿命が先か、胃がんが先か」ということも考えないといけません。



Q. 日本はどの方向に進んでいますか?

A. たとえば10歳でも15%がピロリ菌に感染しています。すでに、大阪府高槻市は成人への検査費用の一部助成と、中学2年生向け検査と除菌治療費の全額助成を実施しています。 北海道や長野、兵庫、岡山などの一部市町村でも、同じような取り組みを始めています。いま、日本の国はこのような方向にすすんでいます。



Q. ピロリ菌は消滅しますか? そして、胃がんも撲滅できますか?

A. ともに可能です。 近代社会においては、親が子供にピロリ菌をうつしているため、親が除菌すれば、子供の感染率が減り、その子供が除菌すれば、さらにその子供の感染率が減り…となって最後は消滅するはずです。ピロリ菌が消滅すれば、胃がんも撲滅できます。数十年後におそらくそうなるでしょう。




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